あるがままに。

二重生活

やっと、会えたね。

今週のお題「2017年にやりたいこと」

由佳ちゃん、居場所がないのわかってる。

あんな部屋にひとりぼっちだったら

誰でも死にたくなる。

インターフォン

二回押す、

ドアの取っ手を握り、

ガチャガチャ

ドアが開いている

あれほど用心深い由佳ちゃん

そんなことあるわけない

ドアを、開ける

土足で 由佳ちゃんを探す

ワンルームの103号室

いや、いない、お風呂のなかにも

いない

どこを探したって いない

由佳ちゃん 由佳ちゃん 由佳ちゃん

会いたい 会いたい 会いたい 会いたい

ベッドの上には小さなメモ

小谷さん と 電話番号が書いてある

何の迷いもなく、その場で電話する

由佳ちゃん 由佳ちゃん 由佳ちゃん

生きていて 生きていて お願い

繋がった

生きている

彼女は 生きているんだって

でも

病棟の名前を聞き出せなかった


母の勘を頼りに、病院を探し出した

祈りながら

探し当てた

ついに

彼女の検査が終わるのを待って

彼女の意思を確認してくれた


30分ほど待った



会える 会えるんだ



看護師が私を呼びに来る

手を入念に洗い マスクを装着

家族しか面会できない状況の中

彼女は私を受け入れてくれ

救命救急病棟の12号室へ案内される

車イスに腰かけて正面を向いている彼女がみえる

髪の毛が剃り上げられた前頭部

右腕にはシーネと三角巾

左前腕にヘパリンロック

左鼻から鼻腔注

顔がやや痩せこけている

活気がない

涙が、止まらなかった

安堵と悔しさと不甲斐なさで

胸がいっぱいになった

私たちは寄り添うように手を握り合った


鼻腔注のせいで発声はできず

不快感で咳をしなければいけない

「ありがとう」

何度聞いただろう

会いに行ったのは私のエゴだったのかもしれない

誰しも自分が一番辛いときには

他人に会いたくないものだろうと思っていた

彼女は、傷ついた自分を、私に公開してくれた

これほど、女性に想いを寄せたことはない

この子を守りたい

この子の未来をできれば一緒に知りたい

苦しみを幸せに変えれる気がしたんだ

二人なら

もうあなたを失いたくない

30分ほど彼女の左手を握りながら膝を床に付け

話をした

私が一方的だったかもしれない

一緒にまた映画を見に行こうね とか

おうちに遊びにいくね とか

また面会に来るね とか

生きていてくれて本当に良かったと

伝えた



この機会を与えてくれた母に感謝する

「ありがとう」